書評 |
今年読んだ本の中ではかなり面白かった本の1冊。「ホットゾーン」や映画の「アウトブレイク」などのウイルス関係に興味のある人は、特に読んだらいいんじゃないでしょうか。特に下巻で、子供を迎えに言った母親が隊員と出会うところなど、ホラー映画でびっくりするような感じになる。更にウイルスに関する謎解きなども、予想もしなかったような展開になり、非常にスリリングやと思った。よくもまあこんな物語をつくるもんやと感心する。
サスペンスとしての完成度の高さは秀逸。麻薬の”ひよこ”にされてしまう過程やパソコン通信を使ったトリックなどはいかにも現代的で、作者はなんかほんまは犯罪者とちゃうか?と思ってしまうほど。この小説に勧善懲悪などはなく、その辺もいかにもリアルな感じがする。最後に恭介と中国人のボスが空港ですれ違うところは、おそらく調子に乗った作者が笑いながら書いてんねんやろうな、と思う。
夜中に一気に読んだけどほんまに良くできた小説。でも、読んでるときに僕なら、死にかかってる人(末期ガン患者など)に見せればええんとちゃうん?と思った。オカルトを題材にしてても、こんなに面白い小説が書けんねんなあ、と感じた。
桂小枝ファンには薦めるが桂小枝をしらん人が読んでも面白くもなんともないかも。せめて探偵ナイトスクープのなかの「しかしまあ、何ですねー」とか「パラダイス」とかを知っていた方が断然面白い。たぶんこの本は関東では売れてないでしょう。
はっきり言ってなにが言いたいのかよくわからん。と言って読んで面白いかと言うと、全然面白くない。宮本輝が講評してたように蛇が何のメタファーかわからん。
最初,マンガの「アキラ」のような感想がした。内容は「ホットゾーン」や「キャリアーズ」を読んでいるだけに,非常に物足りなく,全然面白くなかった。久しぶりに面白くない小説を読んだ。生物学用語の羅列的な箇所がいくつもあり、なんか上辺だけで書いてる気がして,嫌気がした。村上龍はあとがきにアニミズムに陥るのは避けた,と書いているがそれにしては何が言いたいのかまったくわからん。唯一,UGの人たちの冷血さが印象に残った。
アメリカで実際に起きた事件のノンフィクション。ハッカーのケビンに悟られないように,近づいていくところなど,読んでて非常にどきどきする。この本の中で書いてるように果たして、このケビンがそれだけ騒ぐほどの人物か疑問に思う。やっぱりほんまの大物は捕まらんから大物やと思う。
これまでに読んだミステリー小説と違って,舞台設定が駅での伝言ゲームや駅の周辺でアンケートをしている怪しい人や,新興宗教まがいの人など設定が非常に現代的で面白かった。そういった人たちの小さな集団が<ユウコ>を共通項として、最後にはバラバラだった事柄が1つに収束していくところなんかは小説の常套手段やけれど,読んでいてハラハラさせられる。設定の斬新さとがあって一気に読むことができた。ただ自殺の謎解きがぼくはあんまり納得できんかった。それくらいで死ぬかい!と思ってしまう。
女子校のアーチェリー部が舞台。僕はアーチェリーに関してほとんど知識がないので、アーチェリーの描写が新鮮。登場人物の描き方がうまいと思った。犯人の予想は外れたけど、1番最後のところのどんでん返しが起きたとき、やっぱこいつか、と思った。僕はその人が犯人と思ってて、最初から怪しいとみていた。当たらずも遠からずというところでしょうか。面白くて1日で読んだ。
1つ1つの話は短く、法医学に関する本なんて今まで何も読んだことのない僕でも非常に興味深く読めた。ここに書かれていることはすべて実話なだけに、実際の出来事の怖さがある。それにしてもこの上野正彦という人は文章がうまい。それぞれの話をさらっと書けるところなんかは読む側は非常に読みやすいけど実際に書く方は非常に難しいと思う。
小説のテンポが非常に速いので,その速さについていけないと読みづらい。そのリズムが好きなら、この小説の痛快さはもっと増えるでしょう。僕個人はあんまり好きじゃない小説。特にこの2の方はガンプがトムハンクスと会うシーンなんかがあり,もうむちゃくちゃでした。
フランスの核実験の舞台となったムルロワ環礁が舞台。その中でうごめく殺し屋たちのことを書いていて非常に面白い。アンダーグランドでの核実験に反対する人たちの非合法な行動がいい。特に菊池という日本人の強さがよく伝わってくる。
幸せいっぱいの主人公がある日,アクシデントに合う。そこから始まる物語だが、文章が非常に読みやすく、一気に読めてしまう。この作者は読者の感情を揺さぶるのがうまい。特に母と姉が出てきて,現実を見つめずにきれい事ばかりをいうところなんて「なんちゅうやっちゃ!」と読んでて腹が立ってくるほど。なんか松竹の劇を見てるみたい。
いろんな人々が1人の人によってある無人島へ呼び出される。それぞれのひとが殺されていくシーンが何とも言えない。説明もなく殺されていくことに逆に恐怖感を覚える。それで島には自分たちしかいないことから自分たちのことを疑うようになる。最後まで分からず、実は殺していったのは誰ということを思いながら読める,推理小説。
直木賞受賞作。導入部分が非常に僕は好き。最初は雛子の行動が非常にむちゃくちゃでなんじゃいこれは、と思った。でも最後でその理由が分かる。全体を通してなんか薄暗い感じが漂っていて、それぞれの人物にどろどろしたところがなく、なんともいえん。
リングに続く作品。読むならまずリングを読まんと面白くないと思う。内容は相変わらず面白く、一気に読める。後半の方はそらむちゃやで、というようなところがあるがその他は非常に良くできた小説。
初めて読んだ法廷小説。1つの事件に関連して書かれているけど、非常にわかりやすく、また面白い。というのも登場人物が非常に個性的で生き生きとしている。主人公の少しとろい弁護士が非常に人間味があっていい。最後のジュンとの結末は予想通りやけど,その会話が非常に生々しくて、真実味があり、その辺の恋愛小説なんかよりかはいいんじゃないでしょうか。